緒言-B 
2003年12月



 このホームページが開設して3年が経過し、アクセス数も9万件を突破
しました。そこで、最近のTRA/TRI事情に関する雑感を述べさせていただ
きます。


 
 3年前はまだTRA/TRIは一般的な手技ではありませんでした。一部の施設
では新しい手技への探求心に加え、患者さんにとって術後が楽なTRA/TRIを
積極的に採用しようという動きがありましたが、多くの施設では他人事、
あるいはその存在すら知らない状況でした。

 私は1998年頃からTRA/TRIを施行されない施設の先生方が必ず口にさ
れる合併症や手技の問題について、ひとつひとつ問題解決するべく、道具
やテクニックの開発に力を入れましたが、これらの情報を若いドクターに
伝えるために「TRAの巻」という本を自費出版し、業者さんを通じて興味の
ある先生方に1500部ほど配布して頂きました。
 これは実際に最近あったことですが、当院の看護師さんがボロボロの
「TRAの巻」を持っているではありませんか。しかも表紙の色がオリジナル
のものとは違います。どうしたのかと尋ねたところ、他病院のカテ室勤務
だった頃、そこの先生にこの本を勧められたので全部をコピーして、さら
に表紙を付けて勉強したそうです。中を見るとびっしりと赤線が引かれて
いました。私はその時に「TRAの巻」を出して本当によかったと思いまし
た。某先生に言わせると、あの本は「伝説の地下本」だそうです。

 2000年になり新しい情報などを載せた改訂版を出したかったのです
が、これを繰り返すよりはすべての情報を公開してホームページ上で更新
してゆけば、比較的お金もかからず皆さんも低コストで情報を得ることが
できると考え、ホームページを作るノウハウ本を買い込んで、3年前にな
んとかスタートすることができました。
 また、様々な情報を多くのドクターで共有するべきと考え、メーリング
リスト(TRA-net)を発足させ、その中でマニアックな議論をするととも
に、それを後日あえて公開して皆様に”Radialist”の存在やその”旺盛な
探求心”を知ってもらおうとしました。

 さて、あれから3年、最近の事情はどうでしょう。

 まず、診断造影でRasial Approachを全く採用していない(0%)という
施設は、今や少数派に転落してしまいました。50%以上採用していると
いう施設も多く見られます。

 TRIに関しては、全国での比率は30%程度と考えられていますが、徐々
に増加しています。

 今後は世代交代と共に、心臓カテーテルのアクセスサイトのFirst 
ChoiceはRadial Approachになり、診断造影で80%以上、インターベンシ
ョンでも70%以上がRadial Approachにて施行されるようになると思って
います。DESの活躍次第では、もう少し上になるかもしれません。

 TRA-netについてはあえて積極的な入会勧誘はしていませんが、過去のロ
グを読んで、「自分と同じニオイがする」、「面白そうなフェチの世界
だ」、「○○のない文章で勉強したい」などと思った先生方が徐々に入会
されています。3年前に数人で始めたメーリングリストですが、現在の会
員数は○○人で(明らかにできません)、施設数では全国の循環器インタ
ーベンション施設の20%を越えたようです。いったいどれくらいの先生
方や業者さんが過去のログを見ているのかは分かりませんが、アクセス数
は毎日確実に150程度増えています。
 内容についても最近は悪意のある意見はないと思いますが、ドクターの
正直な意見が時には業者さんには耳の痛い事態を引き起こすことが過去に
も現在にもありました。しかしその逆もあり、嬉しい悲鳴もあったはずで
す。
 このようにRadialistの正直な意見を聞く場として、過去のログが貴重な
存在になっているようです。現在、過去のログは2〜3ヶ月遅れで公開し
ていますが、緊急性のある事件については、今回はじめて特集として緊急
公開しました(PENTA特集)。この中で我々の仲間は”生身の患者さんの心
臓治療をサポートする医療会社としての企業倫理”を求めました。実現す
るのは難しいようですが、これは今後他社にも必ず降りかかってくる問題
だと思っています。もしそのような企業倫理がなければ、将来的には営業
マンなど必要なくなり、少々粗悪品でもそれを知りながらインターネット
で安いバルーンやステントをまとめ買いする事態になるでしょう。
 一流企業とは利益追求だけではなく、「社会に貢献する」という高い企
業理念を持っています。この世界の医療会社のうち、どこが一流企業とし
て残るのか、お楽しみです。

 最後に、皆様方のおかげで何とか3年間続きました。今後、どんな展開
になるのかは予想がつきませんが、まだまだ皆様と共にTransradail 
Approachの普及に貢献したいと思います。
 今後ともよろしくお願い申し上げます。