緒言-@ 
2000年11月

 Transradial approach(TRA)による心臓カテーテル検査・治療は、多
くの文献でその有用性・安全性が証明されています。我々は、”得ら
れる結果が同じであれば、患者さんが楽な方法を選択すべきだ”
いう考えに基づきTRAを取り入れましたが、この数年間さらに安全な方
法はないかといろいろ模索して来ました。
 
 TRAは確かに良い方法だと思いますが、”全例にTRAを施行すべきだ”などと言っているわけではありません。21世紀には患者さんにいろんな選択枝を提供できる技術・知識を持ちながら、その時の状況・患者の安楽を考えた上で、適切に選択してゆく医療が当然要求されます。そしてTRAはすでに、選択肢として術者が当然持っていなければならないものになって来つつあります。ですから、TRAという選択肢を”現在のみならず将来も拒否する”ことは”術者としての進歩を自ら否定する”ようなものです。
 TRAに熱心で、ほとんどの症例をTRAで施行している施設でも、緊急時の対応、穿刺不能例、DCA、Rota、etc. でせいぜい80〜85%程度が限界でしょう。中には橈骨動脈グラフトや透析シャントの問題で左TRAをしないという考えもありますし、研修医の教育問題などでFemoral approachを選択しなければならないなどの諸事情もあることがあります。しかし、少なくともTRA率0%というのは、どう考えても術者が自らの進歩を放棄しているか、むしろ意固地になって拒否しているように思えてなりません。

 有名な大岡裁きに"三方一両損”というのがありますが、TRAは、患者、医師、メディカルスタッフの三者すべてにメリットがある、
”三方一両得”です。(病院経営を入れたら四方一両得になるかもしれません。)
 しかし我々が目指すべき術者像は、決してTRAにこだわることなく”患者の状況に応じて臨機応変に手技を選択できる術者”であり、どこからでも涼しい顔をしてアプローチできる術者がカッコイイと思います。

 このサイトが、あなたにとって”TRAという選択肢を増やす”手助けになれれば幸いです。