第134集


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○○です

○○先生の分類に○○先生のご意見をあわせると
1) kissing wire technique
2) retrograde wire crossing technique
3) CART technique
4) reverse CART
4法ということですね。
質問ですが、3と4に関しては、レトロから偽腔を拡張するか(3)、アンテから偽
腔を拡張するか(4)と理解したつもりですが、1と2の違いは何でしょうか。ガイ
ドワイヤーをレトロとアンテで両方操作するという点では同じですよね。1)は目印
としてのみ使用するということで、2)はコンクエストなど強力なワイヤーをレトロ
側に入れるということでしょうか?

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○○です。

Retrograde techniqueが本当の意味で系統だって説明されていないことが違いを作って
いるのかもしれませんが、僕の中では4つの順番が違ってい
ます。

1)がretrograde wire crossing technique
2)がkissing wire technique
3) CART
4) reverse CART
となります。これは実際に手技中に行う順番となります。

で1と2の違いですが、retrograde wire crossingはretrogradeから上げて行ったwireが
そのままCTO proximalまで通過する/させる、ということで
す。Conquestを使うときも少なくありません。
Kissing wire techniqueはretrograde wire crossingが無理な時に今度はantegradeか
らwireを進めてantegradeにwire crossをするという方法で
す。今回の○○先生の症例がまさにこれです。

あとCART/reverse CARTについて、加藤先生の言われているCARTはControlled 
Antegrade and Retrograde subintimal Tracking、ですが加藤先生に
聞いても本当にsubintimal trackingになっているかどうかは見ていない、とのことで
した。当然1,2で通過しない病変が対象となるのでsubintimal
でのcrossになっている可能性は多いですが、絶対subintimal trackingではないという
ことはIVUSを見たものとして言っておきたいです。

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○○です。

細分類ですが、私は、kissing wire techniqueが最初にくるべきだと思
います。このやり方のみ、collateralにOTW balloon(ないしは
microcatheter)を通過させる必要がありません。もっとも、“原始的”
なレトロのやり方だと思います。

話が難しくなるのは、retrograde wrie crossingは、普通は、OTW
balloon(ないしはmicrocatheter)を通して、サポートを増強する、あ
るいは、MiracleやConquestなどの硬いワイヤに変える事が必要ですが、
(RCAよりLADで多いわけですが)順行性にMiracleやConquestが不通過
だったCTOを、collateralの通過に使用したFielder FCがそのまま通って
しまう場合もあります。また、retrograde wire crossingのあと、状況
によっては、それに沿わせて順行性のワイヤリングをする、つまり
kissing wire techniqueを行う場合もありますし、逆行性のバルーンが
通過しなければ、それをCTO内で拡張して、順行性にワイヤを同一チャン
ネルにすすめる、つまりCARTと類似した手技になることもあります。

現在のスタンスですが、kissing wire techniqueは、私は、OTW balloon
(ないしはmicrocatheter)が通過しない場合のみに行っています。手技
の単純化のため、septal collateralを使ったのであれば、septal
dilatationをすぐにおこなって、少なくともOTW 2.0mmを持ち込み、
retrograde wrie crossingやCARTができる体制をまず作ることを心がけ
ています。このほうが、結局、成功率は高く、PCIの時間も短縮できる気
がします。

○○先生がおっしゃるように、IVUSを見ると、手技の内容的にはCARTで
あっても、all trueでつながっていることも少なからずありますね。

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○○です。
○○先生すばらしいです。これは、アンテから、はじめると、灯台のレトロのワ
イヤーがなければ、一番最初のワイヤーはフォルスにいってますので、その後
は、パラレルは必須ですよね。やはり、○○先生と同意見で、KWTがアンテを簡
単にさせたと思います。
立派なレトロです。

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○○です。
さっきJPICから帰ってきました。

一昨日の夜、大阪入りした○○先生と
酒を飲んだとき、ちょうどCARTの話題で激論と
なりました。
帰ってきてメ−ルを開けたら、タイムリ−な論議になって
いたので、久しぶりにお邪魔することにしました。

激論となった内容は、やはりCARTは第一選択となり得るのか?
ということです。いや、ちょっとニュアンスが違いますね。
安易にレトロ攻めを選択するような風潮になってはいないか?
という点でした。
最近のライブでのCTOといえば、大抵はレトロ攻めを見せますね。
もちろん、加藤先生、○○先生、○○先生、○○先生等々・・・
素晴らしい手技を見せていただけるのは有り難く大変勉強に
なります。僕も超難解なアンテ失敗例をものの見事にレトロから
通した例をいくつも見ています。ですから、決して否定派では
ありません。
ただ、ライブ会場でスクリ−ンの向こう側での見事な手技を
見せられてしまうと、帰ったら自分もやってみよう!って思っちゃう
先生も少なくないんじゃないでしょうか。
○○先生から少し提案があったように思いますが、どんな症例を
どんな先生が(つまりどれだけの経験を持った)、どんな施設で
行うべきなのかが、まだまだ確立してないのではと思います。

昨年のサッポロライブのサテライトシンポで、○○先生にご講演を
お願いした時、質問したことを覚えています。
「こんな症例はレトロがいい、というのも必要ですが、反対に
こんな病変もしくはこんな状況ではレトロはやってはいけないという
事を教えて下さい」と。
○○先生、すみません。お答えの内容を忘れてしまいましたが・・・。

ライブを主催している立場の僕が強調したいのは、
ライブで見せていただいているあの技術は
多くのIntervenntionalistが今すぐできるものではないと言うことを
やはり経験の深い高名な先生方にはっきりと言っていただきたいのです。
例えば、スクリ−ンの下に(良い子はマネしないでね!)ってテロップ流すと
か・・・。

これは単に僕の思いつきですが、今年のサッポロライブ(8月30日〜9月1日)では
「レトロ攻めの光と影」なんていうセッションで、いい面と怖い面を
激論してもらうのも面白いかななんて思ってます
(実行委員の皆さん、単なる思いつきですから・・・まだ決めてませんよ)。

長々と水を差すような書き込みでスミマセンでした。皆さんのご意見を知りたいです。

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○○です

私ももちろんレトロ否定派ではありません
ストラテジーとして知っておくのは良いとしても
安易に初めから手を出す手技ではないと思っています。

きっちりSeptalが見えている症例ならまだしも、
いきなりSeptal Dilataionまでするのはやはり限られた
術者しかしてはいけないのではないでしょうか?

○○先生と同じで本当に「よい子はまねしちゃだめ!」って思います

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○○です。

大変興味深くRetro-CTO discussionについてROMしておりました。
私は施設でのfirst operatorではありません。ですのでelective CTOをする機会はほと
んどありませんし、ましてretro-CTOを行うことは当面ありません。(ただ、おそらく
は私と同じ立場の人間のほうがTra-netには多いと思います。)ですから、もしRetroで
でも何とかしたい症例があれば、Retroが可能な先生にお願いすることになります。し
かし、現段階では安全性、という問題で、お願いすることにどうしても躊躇してしまい
ます。
いろんな高名な先生に、Retro-CTOのお話をうかがうのですが、必ずといっていいほど
致死的な合併症のお話が出てきます。主たるものはRetro側での血栓症と、septalでの
心筋内のperforationかと思います。ただ、どちらの合併症でも死亡例が複数報告され
ているように思います。もちろん、ACTを頻回に測定したり、中隔で穿孔したら塞栓す
る、といった方法でリスクが減少するのは事実かと思います。ただ、私が危惧するのは
あまりに合併症の頻度に関するDATAが乏しい、ということです。高名な先生方でも
Retroで100例以上、というのはあまりお聞きしませんし、一方で致死的な合併症を経験
された先生が複数いらっしゃるように思います。お話を聞く限り、今までの致死的な合
併症の頻度は1%を越えているのではないでしょうか。(100例に1例以上)だとする
と、これは待機的CABGに劣りかねません。
 私は決してCABG推奨派ではなく、できることならいずれはすべての患者がPCIで治療
できたら、と思っております。ただ、一方でいくら侵襲が少なくても、もし、Retroの
危険性がCABGを上回るのでしたら患者さんにはお勧めできません。今、Retroを行われ
ている先生方に是非お願いしたいと思っていることがあります。現時点でのDeviceと
STRATEGYでのRetro-CTOの致死的危険率(大丈夫そう、とかの雰囲気、ではなくてDATA
として)がどれくらいなのか、日本全体でどれくらいなのか、またはかなりOperatorに
よる個人差が生じうるものなのか、ということを可能であれば全国単位で評価していた
だきたいと切望します。Antegradeでの成功率も、高名な先生方だと90%くらいはある
かと思います。その上で、5〜10%の成功率を上げるために、もしCABGを上回る危険性
があるのであれば、Retro-grade CTOを勧め
ることをやはり躊躇してしまいます。ただ、一方でもし安全性が確立されれば、その成
功率の高さから、それこそPCIがCABGに完全に取って代わる可能性を秘めているとも思
います。今後のRetro-CTOの発展、さらにはPCIの発展のためにも安全性についての正確
な評価を是非お願いいたします。

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○○です。
○○先生の視点は参考になります。
合併症についてのデーターが乏しいというのは事実ですが、さすがの加藤先生で
も100例ちょっとの症例ではないでしょうか?
○○先生、光藤、斎藤先生とあわせて、500いくのでしょうか?
致死的な合併症のデーターはないですよね。数がすくないことと、ラーニング
カーブの途中であり、まだ、安定していないということがあるのではないでしょ
うか?
そのために、加藤先生は、カートコースの開催や、カートトレーナー育成して、
レトロ用のデバイスの使用について、注意をうながしているものと思います。
現状では、合併症については、血栓症は、予防可能です。septalの穿孔および血
腫は、デバイスの改良と、その予測がおおよそついているので、確立は極めて低
く、通常のCTOのリスクと同等にできるようになっていると思います。
ただ、通常のCTOでも、通常のPCI以上に合併症がおきます。穿孔、タンポ
ナーデ、血管の乖離、大量の造影剤など、ですから、CTOの治療をするなら、
やはりそのような合併症を予測および完璧な処置ができて、試みるべきと思うの
で、レトロだからという特別視は今後は、いらなくなると思います。ただ、○○
先生、○○先生、○○先生、○○先生が指摘するように、そこらへんを自分で、
ちゃんと理解して、対応できる人が試みないと、危険なことは事実です。

ここらへんは、北海道の仕切り役の○○先生が提案するように、札幌ラ
イブで、光と影で、十分に議論できるようにしたいですね。
いつも、思うのですが、このトラネットのおかげで、色々な情報が学会にいくよ
りも、はるかに早いスピードで、交換されるので、大変役に立っています。

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○○です。

いろいろディスカッションが盛んですが今回症例提示したのは”CTOの光と影”、”レ
トロ攻めの光と影”という側面を知りたいという気持ちが僕自身にもありました。

今まで世間には公表していませんでしたが私は数年前自分の関係したライブで自分の患
者を一名を失いました。これは我が人生で最大の痛恨事で、今でもライブに対するトラ
ウマとなって残っております。

○○先生の言われるように本当の現実?真実?(合併症の真実)を知りたいと思いま
す。

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○○です。

○○先生、○○先生、○○先生と同感です。
影の部分に非常に興味があります。
すでに一部の先生方には教えていただいておりますが、
幸いにトラネットはクローズドですし、
レトロのご経験があるその他の先生方、
支障のない範囲で症例数と合併症をお教えねがえませんでしょうか?

ちなみに私は真のレトロの経験はありません。
マクロチャンネルというか
直結したようなでかいcollateralにウイスパーを通して、
アンテ攻めのワイヤーの灯台にしたことがある程度で、
その他はSVG経由の似非レトロのみです。
septalを拡げた経験はありません。
もっとも、スケジュール上の理由から、
1件に2時間以上かけられるような手技を行う時間的余裕は私にはありません。
余程の理由が無ければ今後もレトロを行うことはないと思います。

なお、ご参考までに、SVG経由の似非レトロは
安全性、成功率ともに真のレトロより高く、
かつTRIでも施行可能です。

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○○です。

いろいろディスカッションが盛んですが今回症例提示したのは”CTOの光と影”、”
レトロ攻めの光と影”という側面を知りたいという気持ちが僕自身にもありました。

今まで世間には公表していませんでしたが私は数年前自分の関係したライブで自分の
患者を一名を失いました。これは我が人生で最大の痛恨事で、今でもライブに対する
トラウマとなって残っております。

○○先生の言われるように本当の現実?真実?(合併症の真実)を知りたいと思いま
す。

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○○です。

CARTあるいは逆攻めの話題は非常に参考になります。私は根性なしなのでCARTはCTO
攻めの手技としては必要だと思っていながら自分はアンテで攻めて、だめならうまい
先生にやってもらうか涙をのんでCABGにまわすといったところでしょうか。実際当院
は200例ちょっとの年間PCIでCTOあけが10例前後(うちは外科病院なので、大変そ
うなのは手術に回ります)、術者5名で成功率は7−8割といったところです。つま
りレトロをやればいい症例が年間2−3名しかいないことになり、これでは自分の
ラーニングカーブをあげるよりも御高名な先生方の御努力によってデバイスが進化
し、標準的な手法になるのを待っているような状況です。私自身はすこしでも患者さ
んのためになればと昨年の鎌倉ライブでも発表しましましたが運動療法でコラテを増
やそうと指導しているような状況です。CARTマスターの皆様に質問ですが、造影を見
たときに「CARTが出来そうなコラテ」と判断できるような側副血行路とはどんなもの
でしょうか?特にseptal経由の時、先端造影で対側が映ってくるレベルで十分なの
か?きちんとつながったコラテが視認できなければいけないのか?あとは太ければ太
いほうがseptal perforationのリスクもなく良いのか?などです。
つまり私がアンテ攻め失敗の症例をどなたかうまい先生お願いするにあたって、見て
おくポイントはどこ?というのが知りたいです。

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はじめまして.
○○労災病院の○○です.
遅ればせながら登録させていただきました,
○○大学を平成8年に卒業し,現在はPCI見習い中です.
TRA-netでも勉強させていただきます.
どうぞよろしくお願い申し上げます.

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○○です。

 さまざまな問題提起があり、すべてお答えするのはとても不可能です。
できる範囲になりますが、ご容赦ください。非常に長くてすいません。

 >こんな症例はレトロがいい、というのも必要ですが、反対にこんな病
変もしくはこんな状況ではレトロはやってはいけないという事を教えて
下さい

  ○○先生、その節は大変お世話になりました。昨年9月のことを、私
も正確には記憶していませんので、現在考えていることを書きます。ま
ず前提条件として、透視・撮影が一定のqualityにある(これは、皆さん
が感じられる以上に、実は非常に大切です)、デバイスがそろってい
る、ACTが迅速に測定できる、などなど、hard wareの諸条件があるで
しょう。レトロをやってはいけないものは、まず、連続したcollateral
がない場合です。安全性の面では、なんといっても、donar arteryにそ
れなりの病変があって、かつ、CTOにレトロから手を出す前にそちらの治
療ができない方です。とくに、デバイスが通過することによる虚血だけ
でなく、septal dilatationをやるのであれば、冠動脈近位部に病変が
あった場合は、非常に注意が必要です。レトロから入れたバルーンを抜
去する際、必ず、程度の差はあっても、ガイドカテーテルの引き込みが
あるからです。

 ただ、これはあくまで原則であって、ここの症例におけるストラテジー
は、いろいろな条件に左右され、一言では言えません。添付ファイル
(fig1-1〜11)はRCA CTO+LMT bifurcationです(fig1-1, 1-2)。RCA
CTOは閉塞長は、そこそこ ですが、CTでも明らかな石灰化が、いわゆる
abtupt type with a side branchである入口部に存在していました。CTO
の解剖学的不成功要因を多数含んだ形態です。また、CTO入口部と思しき
直前に小さな側枝が2本あります。順行性アプローチでここから穿孔す
ると、止血はきわめて難しく、下手をするとRV枝ごと塞栓しないといけ
ません。ですので、このCTOに手を出すなら、レトロが必須と考えまし
た。また、レトロといっても、kissing wireでは難しそう、retrograde
wire crossingかCARTが必要そうです。ただ、LMT bifurcationがあり、
このままでは到底、複雑なレトロはできません。



 もちろん、CABGもリーズナブルな選択です。しかし、患者さん・ご家
族とよく話し合った結果、PCIによる治療を希望されたので、IABP下に、
まずLMT bifurcationを治療しました(fig 1-3)。Cypher2本でcross-over
し、ワイヤをD1/LCxにre-crossさせ(fig 1-4)、双方に対してLMT-LAD
とKBTしました(fig 1-5)。その後、stagedでRCA CTOにPCIしました。も
うLMT bifurcationがfixされているので、安心してレトロが可能です
(fig1-6)。AC枝はごく短距離ですが、高度cork screwの部分がありワ
イヤが進まず、septalは連続したcollateralがありませんでした。幸
い、心尖部経由で連続したチャンネルが認められました(fig 1-7)。
Runthrough NSが4PDに進んだので、OTW Ryujin 2.0mmをいれ、anchorし
ながらConquest Proでretrograde wire crossingを行いったところ、CTO
を通過し(fig 1-8, 1-9)、アンテのガイドカテ内まで到達しました。
アンテのガイドカテ内で順行性バルーンでConquest Proの先端をanchor
して、さらに逆行性にバルーンを通過させ(fig 1-10)、拡張しまし
た。そのspaceに順行性にRunthrough NSを再度通過させ、Cypher2本で終
了しています(fig 1-11)。

>レトロのご経験があるその他の先生方、支障のない範囲で症例数と合
併症をお教えねがえませんでしょうか?

 経験症例数も増え、それなりにデバイスもそろい始めた2006年の3月初
旬から、造影上連続していて、ワイヤによるアクセス可能と判断された
collateralがあり、donar arteryに上述のような病変がなく(ないし
は、あらかじめ治療可能で)、以下の条件のどれかが存在する場合は、
レトロを積極的に用いることとしました(それまでは、よりケース・バ
イ・ケースの判断でした)。

1)閉塞長が目測でおよそ15〜20 mm以上
2)CTOの病変形態が順行性アプローチには不適切
3)一度不成功に終わっているCTOのre-try

  自分のデータベースを簡単にひっくり返してみましたが、ここまでの
約10か月少々で、自・他施設を含め、CTO114病変に対してPCIを行いま
した。Re-tryが約1/3強を占め、なかり症例には、バイアスがかかってい
ます。ざっと目を通しただけなので、正確な数字は少し異なるかもしれ
ませんが、レトロは計54病変で用いました(ですので、私のレトロの全
経験数は、まだ、100例には到達していません)。7月中旬までの前
期は、サポートに優れたFielder FCが使えず、また、septal dilatation
よりFinecrossのdeliveryを優先しました。それ以降の後期では、
Fielder FCが使えるようになるとともに、entire septal dilatationを
優先しました。全期間を通して、レトロに起因する3大合併症(死亡・
緊急CABG・Q波梗塞)は、幸いありませんでした。アンテ側の血栓症およ
び冠動脈解離も、ありませんでした。Septal collateralの穿孔は前期で
4例生じました。ワイヤ先端によるものが1例・1.5mm OTW balloonによ
るものが1例・Finecrossによるものが2例でした。ワイヤ以外による3
例は、いずれもデバイスが通過せず、押し込んだときにseptalが過度に
たわんだことに起因しています。Finecrossによるもの1例で、自己皮下
組織による塞栓で止血を行いました。後期は、ワイヤ先端によるもの1
例のみでした。このケースは、アンテがぐしゃぐしゃになっているLAD
CTO re-tryで、つながっているか、いないかという細いseptalから慎重
にワイヤリングを試みましたが、穿孔していまいました。その後、RV枝
からのepicardial collateralを介して、何とかFielder FCとOTW Ryujin
2.0mmが入りCARTに成功しましたが(fig 2-1, 2-2)、手技終了後もわ
ずかに出血が続いていたので、念のため自己皮下組織による塞栓を行い
ました。これらの計5例では、上記のように、穿孔はしたものの、それ
以上のイベントは生じませんでした。



  私は、経験がありませんが、デバイス(ワイヤおよびバルーン)の抜
去不能という合併症もありえます。CTOに対して、硬いワイヤを無理にレ
トロ側から強くおしこまないこと、屈曲している部分はできるだけバ
ルーンでcoverすること、さらには、バルーン抜去不能を避ける意味で
も、septal は広げたほうがよいので、できるだけ、septal dilatation
をする、という対応になるでしょうか?

>造影を見たときに「CARTが出来そうなコラテ」と判断できるような側
副血行路とはどんなものでしょうか?

  大変に難しいご質問です。Feilder FC、さらには、X-tremeが登場して
から、さらにseptal dilatationが可能な範囲は広がったと思います。マ
イクロカテからの先端造影で、連続性が確認され、過度のcork screwを
呈していなければ、かなり細いものでも可能ですが、実際にはワイヤリ
ングを試みてみないと判断のつきかねるケースも少なくありません。こ
うしたサポートに優れたワイヤが通過すれば、90%以上の確率でentire
septal dilatationが可能です。その後は、おおよそ0.8mmのチャンネル
が形成されるそうなので、2.0mmのOTW Ryujinはプロファイル的にも持ち
込みが可能ですから、CARTが出来そう、という判断になります。
Epicardial collateralは、時にいけそうでも、実際は高度屈曲(あるい
は、小さく曲率が厳しいcork screw)であることも少なくないので、安
全性を考えて、あまり粘らない の一言に尽きるかと思います。ワイヤ
が通過しても、OTW balloonやFinecrossが不通過なら、dilatationは禁
忌とされているので、kissing wireのみで全力を尽くすことになりま
す。

 皆様、こんなところでよろしいでしょうか?

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○○先生

大変詳細なご指摘、有り難うございました。
本当に勉強になりました。
やはり、数多くのご経験をされている先生のような方に
系統立ててまとめていただくしかありません。
前提条件にしても、1) 装置・設備の条件、2) 術者の経験
3) デバイスの限界、4) 病変の問題・・・など
様々な面で、いろいろな条件(限界)があるようですね。
私はCART講習会に参加したことはありませんが、
もうすでにこのような事はどなたかがスライドなどで
まとめてらっしゃるのでしょうか。

そして私が指摘したいのは、○○先生が挙げていた
レトロを積極的に用いる条件として

> 1)閉塞長が目測でおよそ15〜20 mm以上
> 2)CTOの病変形態が順行性アプローチには不適切
> 3)一度不成功に終わっているCTOのre-try

の中の2)です。これはやはり、順行性アプロ−チで安定して
80%以上の成功率、または年50例以上のCTOを手がけている
術者でないと、理解できないものなのではないでしょうか?
当たり前のことですが、私を含めCTOの経験が少ない術者は、
まず順行性から攻める治療経験をしっかりと積んだ上での
レトロだと思います。
ライブなどでは、この点を強調しなければならないのではと思う
今日この頃です。
何度も書きますが、私は決してレトロ否定派ではありません。
慎重派とでも言いましょうか。
全国で少数の経験深い先生方には、このままこの手技の標準化に
向けて続けて行っていただきたいですし、ライブでも見せて
勉強させていただきたいです。
全国の皆様、今後ともご指導のほどよろしくお願い申し上げます。

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○○です。

○○先生、詳細なご解説たいへん勉強になりました。
私は知識・経験ともにないため、初歩的なことですが質問させてください。

> こうしたサポートに優れたワイヤが通過すれば、90%以上の確率でentire
> septal dilatationが可能です。
1.25 or 1.5mm OTWをお使いになると思うのですが、
・何atmぐらい?
・何秒くらい?
inflationされるのでしょうか? Entire dilatationをするとなると、少なく 
とも5〜6箇所は inflation する必要があると思うのですが。

また、entire dilatation により、マイクロカテやバルーンの通過性(抵抗) 
は手技中を通してずっと低いものなのですか?0.8mmのチャンネルが一過性に 
できたとしても、すぐにrecoilして、押し込むにせよ抜くにせよ抵抗が強そう 
なイメージを浮かべてしまいます。
そしてそのような小さなチャンネル越しの retro wiring では、ante wiring  
for CTO と同様の wire の感触が手に伝わってくるものなのでしょうか?もし 
手に感触が伝わりにくい場合は、どのような方針(方向)でワイヤーをお進め 
になられているのでしょうか?

お忙しいところ度々の質問で申し訳ありません。

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○○です。

○○先生からのご質問についてご返答します。

septal dilatationは、1.25-1.3mm/2-3atmが原則です。加藤先生は、最
近、SOEを使われることが多いようですが、私は、OTWでやっています。
拡張時間は1回あたり数秒、そのかわり、おっしゃるとおり、上から下ま
で全部広げるので回数は多いです。1.5mmは過大で、穿孔のリスクが高ま
るそうで、やめておくほうが無難でしょう。ただし、USでPCIをするとき
は、FDA approvalの関係で、最小のバルーンがOTW Marverick 1.5mmない
しはOTW Voyager 1.5mmになるので、これを1atmで拡張する以外に方法
はありません(先日、1.5mm balloon のシャフトで穿孔した症例につい
て書きましたが、そうした状況と考えてください)

私の経験では、いったん拡張されたseptal collateralは、すくなくと
も、PCIが終わるまではrecoilせず広がっていました。添付ファイルご参
照ください。



ワイヤの感触・操作性ですが、もちろん、anteにくらべて遥かに劣りま
す。ですので、OTW balloon 2.0mmないし2.5mmを遠位部冠動脈内で
anchoringしながらの操作が基本になります。何のワイヤを使うかは、オ
ペレータにより違います。私は、ある程度方向が読めれば、Conquest
Proで、bi-plane下に、controlled drillで進めるのがすきです。閉塞長
が非常に長ければ、Fielder FCのまま、あるいはMiracle 3にして、
sub-intimaではありますが、血管内を遡り、CARTでつなぐようにしま
す。ただ、Miracle3が進まなければ、閉塞長が長くても、Conquest Pro
を使用せざるを得ません。このあたりは、今後、MSCTで血管走行が事前
にわかれば、とてもやりやすくなるでしょう。実は、先日提示した症例
も、slub MIPで再構築したRAO 30°・LAO 45°相当のMSCT画像を見なが
ら、逆行性にConquest Proでワイヤリングしました。これらの情報は、
とても役に立ちました。

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○○です

しつこくて申し訳ございません

レトロ慎重派として教えて頂きたいのですが
レトロが様々な条件で確立された時期(○○先生の言われる2006年の3月)
以前でレトロを始めた頃と現在ではもちろん成功率も違うと思いますし、
合併症の種類・頻度も異なると思います

ほとんどの先生方はきっと50例もレトロはされてないと思いますので
始めた頃にはどのような合併症があり、何に注意すれば良いのでしょうか?

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○○です。

○○先生、ありがとうございます。レトロですが、TRAでも賛否両論です
から、確立された手技なのかどうか、何ともいえませんが、一応、手技
として、それなりに計算できるようになってきたのは、Fielder FCの上
梓があった昨年の夏頃と思います。初期の頃と一番違うのは、ワイヤが
collateralを通過する確率でしょうか?(最近になればなるほど、厳し
いcollateralをやっているので、成功率そのものの比較は困難です
が。。。) cork screwの手前までアプローチできたら、できる限り小
さなベンドをつけるのが大切です。また、マイクロからの先端造影は、
ワイヤを抜くとき、生食をマイクロのハブにかけてエアの引き込みを予
防しながら、頻回に行います。

Fielder FCも、X-tremeも、通るときは、スッと、たわむことなく通りま
す。たわんだまま押しても決して通過しません。抵抗はあまり感じられ
ず(特にX-treme)、透視で判断するほかはありませんが、無理をすれば
穿孔します。

septalから正しく進んでいるかどうかは、多方向からの透視で判断する
わけですが、(順行性ワイヤリングと同様)遠位部冠動脈の心拍動によ
る動きと同期しているかどうかが参考になります。意外に何かを感ずる
事ができます。

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○○

○○先生の理論的な文章とは、対極にありますが、今日の一言

昨日も、RCAのCTOで、入り口がよくわからず、アンテからのワイヤーがどこに
いっていいのかの目安がつきにくいかたで、レトロから、ワイヤーを通過させ
て、フィルダーFCで、マイクロカテーテルをいれて、ミラクル3Gに交換して、
CTOの部分をワイヤーでドリリングして、レトロのワイヤーの先端を RCAのCTOの
閉塞の部分まで、もってきました。
その後にreverse CARTに持ち込もうとして、ワイヤーを奥に通過させないと、ア
ンテのバルーンが通過しないために、ワイヤーをすすめますが、ミラクルでは小
さい枝にワイヤーが逃げるために、レトロのワイヤーを目安にそれにあわせるよ
うに、パラレルワイヤーの要領で、コンクエスト12で、penetrationしていき
ました。そうすると、KWでアンテからワイヤーが抜けました。これだけ、書く
と、アンテから最初から通過するなら、レトロなんて、思うかもしれませんが、
レトロのワイヤーがCTOの部分を通過していることによる、ワイヤー操作の安心
感は、それがないものと比べたら、比較にはなりません。
あと、うんのいいことにアンテのワイヤーがレトロのマイクロカテーテルのなか
に偶然はいって、LCAのガイドまではいったので、そこで、ガイドカテーテルの
なかで、アンテのワイヤーをアンカーしたので、CTOのデバイスの持込は容易で
した。

ちなみに、レトロのワイヤー通過まで、容易なかたで、10分、前からのワイ
ヤー通過までに、20分で、すべての手技が1時間以内に終了しています。造影
剤150
前からやったら、パレラル、ivusガイド、2時間、造影剤300越えはしたと思
います。レトロが、CTOの手技を安全にしてくれる手技と感じた症例でした。

うん、やはり右のCTOの閉塞の長いのCTOは、レトロを組むと、簡単に治療ができ
ますね、

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○○です

今回の症例提示で今まで知らなかったレトロについて多くのことを学びました。
多数の先生方、ありがとうございました。
レトロから通すからレトロと思っていましたが、アンテから通すレトロもあるとは知り
ませんでした。
TRAネットに参加していてよかったです、勉強になりました。

そろそろ今回のレトロ、アンテ論争の総括といきましょうか。
どうです、元祖オカルトの○○のお兄ちゃん、締めてもらえませんか?

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○○です。

レトロ論議は興味深く拝見していました。
○○教授の思惑どうり、Tra-netの誇るall star cast 各々が
名演で見ごたえのある展開でした。○○先生の付けたタイトルがCTOというのがま
た何とも妙というか・・・・。

私自身はレトロカートをやっている立場です。それゆえ可能な限り、トレーナーコー

、研究会に参加して情報を収集、統合し、自分の経験した合併症はそういう場で発
表、共有しています。その点で今回の論議でそれは初耳というものはほとんどありま
せん。
しかしながら、“あるある”程度の情報netが多い中、短時間でこれだけの精度の情
報が集まるTra-netの力には改めて驚きました。

私がレトロをやるのはアンテで解決できない症例があるからに過ぎません。
retro, CARTは非常にニッチな世界で現状ではとても “影が出来るほど光が当たっ
ている。”とはいえないと考えています。
○○先生、裏メールでも書きましたが、“レトロの光と影”はこの手技が生き延
びた暁に、いずれCCTかCTO研究会でやっていただくタイトルと思います。
せめてretroの合併症とその対策ぐらいにしませんか?

現状において、CARTは当然誰もがやるべき手技ではありません。
だからこそ加藤先生はいろいろな情報をCARTを肯定的に考えているところから
すべて発信していると思います。やっている人間が可能性があると考えるのなら、今
は育てる段階と思います。いかがでしょうか。

日本以外では一部を除いてほとんどレトロどころか基本的なCTO技術も理解されて
いません。○○教授が実演、啓蒙活動の最先端で頑張って居られるのは、ただでさえ
数少ない症例のなかで解析可能なものを集めるための努力と理解しています。私の経
験した合併症は研究会、ライブ以外でもJSICで発表予定です。

こんなとこでなんですが、今しがた外来で○○先生に札幌ライブでレトロを決めてい
ただいたRCA CTOの患者様が、PCI後大変楽になったと喜んで居られました。先生
によろしくとお伝えくださいとのことでした。あらためてありがとうございました。

いまのところ、よいこはけっしてまねをしてはいけませんよ。
良い子の定義はX-tremeといった危険なおもちゃには決して近づかない子のことで
す。

とういわけで、○○教授。総括とは程遠いですがレトロもそろそろ一旦店じまい、と
いうことでいかがでしょう。
しかしながらこんなバリバリのTFI手技、ここでこんなにひっぱってよかったんで
しょうかね?
郡山行きの時間が迫ってきたので読み返さずにこのまま送信してしまいます。不適切
な表現があればお許しください。

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○○です。

皆さんが終わらせようとしている時に最後に一言だけ。。。

○○先生がTFI procedureと書かれていましたが、reverse CARTしてwireをretro-ante
で通せばbackupが強力になります。ですのでTRIで行えま
す。TRA-netにふさわしい可能性があると密かに思っています。実際2例Radi-Radi 
Retroの症例があって将来の可能性と考えています。

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○○先生
さすがというか、見事なまとめの文章でした。

裏メ−ル、呼んでましたが、すぐに返事しなくて
すみません。
もう少し系統化、標準化が煮詰まってから、ということですよね。
ご指摘通り、合併症とその対策といった内容でサッポロライブでは
とりあげましょう。ま、今後の実行委員会で決めましょうね。

僕もこの素晴らしい手技が、安全に有効に普及されることを
切に願ってる一人です。

あ、僕もそろそろ郡山に向かって出発しなければ・・・。
ということは、○○アニィと同じ便かな・・・?

失礼しました。

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○○です。

○○先生、札幌ライブの患者さんの経過報告、ありがとうございま
す。とてもうれしく思います。

締めた直後に恐縮ですが、最新のワイヤを使えばここまでのsepalが使え
る、ということで2例提示して終わります。興味ないひとは、消してくだ
さい。本当はもっと早く出したかったのですが、CDが届いたのが昨日
だったので。

Case 1:RCA CTO re-tryです(1-1および1-2)。実は、1st majorは2枚の
ステントで覆われ、バルーン不通過。心尖部近くにまがってはいるもの
の連続したcollateralを発見(1-3)。Fielder FCはスッと通過しまし
た。以前のワイヤなら到底サポートが足りずバルーン不通過、場合に
よっては、septal が裂けてruptureかもしれませんが、強化されたサ
ポートにより1.25mmが追従し、septal dilatationできました(1-4)。
2.0mmをもちこみ、上からConquest ProでCART(1-5)! DESを3本入れて
できあがりです(1-6)。septalがよく拡張されているのがわかります
(1-7)。



Case 2:続いておこなった RCA CTO re-try。#1にあるステントも今回は
閉塞し、doubleでtotalになっていました(2-1)。collateralを探しまし
た。何かありそうな感じです(2-2)。Fielder FCをすすめ、Finecrossか
ら造影すると、cork screwなものの連続したcollateralが確認できまし
た(2-3)。悪いおじさんたちが使うX-tremeはこのcork screwを通過、
septal dilatationにはいりました(2-4)。そのあと、2.0mmを持ち込ん
で、上からConquest ProでいよいよCART(2-5)。DESを3本入れてできあ
がりです(2-6)。こんな細いseptalも良く拡張されています(2-7)

ということで、レトロでなくては、できないCTOは確実にある頻度で存在
します。○○先生がおっしゃったように、collateralの選択に困らなけ
ればアンテよりすばやく終了する症例もかなりあります。ちなみに、こ
の2例、Case1は透視時間41分・造影剤300ml、Case2は透視時間62分・造
影剤420mlという記録が残っています。



デバイスがよくなり、今年はいよいよ何かが確立できる年なのか、それ
とも、さらに厳しい症例がまっているだけなのか、それはわかりませ
ん。お付き合いくださり、ありがとうございました。

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